事務所コラム

建設業許可と相続

建設業許可の要件の中で重要なものとして、「経営業務管理責任者」と「営業所専任技術者(旧専任技術者)」があります。
個人事業主の方で建設業許可を取得されている場合、この両者を一人親方が兼任しているケースが多く見られます。また、法人事業主の方の場合も代表取締役が両者を兼ねていることが少なくありません。
経営業務管理責任者と営業所専任技術者のいずれかが一日でも欠けると、建設業許可は失効します。そのため、両者を兼ねている方が亡くなられた場合には、許可を維持できなくなります。このような場合には、一旦廃業届を提出し、改めて許可を申請し直す必要がありますが、通常は許可番号が変わってしまいます。その際、次のようなデメリットが発生します。

① 再取得までの無許可期間中、500万円以上の工事を請け負うことができない(許可が下りるまで通常1か月ほど要します)。
② 経営事項審査で営業期間がリセットされ客観点の加算が不利になるほか、建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録年数が0に戻る。
③ 新規申請扱いとなるため、手数料が高くなる(更新時5万円に対し、新規は9万円)。
ただし、令和2年10月1日施行の建設業法改正により創設された「相続による許可承継制度」により、一定の条件を満たす場合には旧許可番号を引き継ぐことができます。もっとも、相続人が被相続人の許可業種に関する経営業務管理責任者および営業所専任技術者の要件を満たしている必要があるため、原則として新規許可申請が必要となります。

建設業許可を途切れさせないためには、「経営業務管理責任者」と「営業所専任技術者」の後継候補を複数・計画的に用意しておくこと、そして欠けた際に即日から数日以内に変更届を提出できる体制を整えておくことが重要です。
具体的な方法としては、次のような取組みが挙げられます。
● 経営業務管理責任者候補を複数育成
 ・ 社員の中から「5年以上の経営経験」等の要件を満たせるよう、取締役への早めの就任および登記申請を行う。
● 営業所専任技術者候補を複数確保
 ・ 一人の資格者に依存せず、若手・中堅社員に対して施工管理技士・建築士等の資格取得を会社として支援する。
 ・ 実務経験年数による要件を満たせるよう、担当現場や職務を計画的に割り当てておく。
 ・ 業種ごとに営業所専任技術者を別の者にしておく。

このような対策を平時から講じておくことで、経営業務管理責任者や営業所専任技術者が欠けた場合でも迅速に変更届を提出でき、建設業許可を継続的に維持することが可能となります。

2025年12月15日

行政書士 伊藤謙